午前3時に目が覚めた。胃の気持ち悪さを感じた。二日酔いだ。昨晩家のお父さんとウィスキーを飲みすぎたのである。
オールドダルバールというネパールウィスキー。私はククリラムというネパールラム酒が好きだが、このオールドダルバールも美味しかった。ストレートは喉が燃えるような刺激だったので、水で割って飲んだ。
2本目を買いに出たのが間違いだった。チキンや大根をつまみに、オールドダルバールを飲み続け、その後ダルバートまでたらふく食べてしまった。「どれだけ飲んでも僕は酔わないし変わらない」なんて言ったことをいささか後悔した。
私は昨晩ウィスキーを飲んだ後、わざと大げさに首を横にゆらゆらさせて見せた。お父さんが「マテコ?」と私に尋ねた。マテコ?"酔った?"ということだろうか?スマホのネパール語辞書で検索してみた。(UNOES Nepali English Dictionary)
"マトゥヌ=to get drunk"。なるほど。過去分詞で"マテコ"。オールドダルバールを飲んだ時に出会った単語だから、赤文字で"オールドダルバール"と書き加え、スマホの写真に保存した。
昨晩の私は本当に酔ったみたいで、真っすぐに歩くこともままならなかった。こんなに酔ったのは初めてだった。ベッドの上に座って、「マテコ~、マテコ~」と口ずさみながら、振り子のように首を動かし続けた。
一晩経っても"マテコ"という単語がはっきりと頭に浮かんできた。身体経験をもって学習した単語は、まず忘却しない。実際に酔った状況で「マテコ」に出会い、「マテコ」と発したのである。今後「マテコ」と口にするか耳にする度、オールドダルバールの刺激、胃のむかつき、酔った勢いで支離滅裂なことを書き綴った日記を、私は思い出さざるをえないのだろう。
そんなことを考えながら、今朝もチヤとセルロティ。
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ティハール5日目。"バイ・ティカ"というイベントがある。"バイ"とはネパール語で弟のこと。バイに対するティカなので、姉妹たちが兄弟に対して礼拝をする。「姉が弟を死の王ヤマ(閻魔大王)の手から救い出すという美しい物語に基づき、女性の守護力を男に与えるのである」(『地球の歩き方 ネパールとヒマラヤトレッキング 2021~2022版』ダイヤモンド社、p.360)
バイ・ティッカの内容は、非常に不思議で興味深いものだった。私と息子くんは絨毯の上にあぐらをかいて座った。私たちは娘さんたちから、頭、両肩、両膝にオレンジ色の花びらをまかれたり、頭に油をつけられたり、ヨーグルトを食べさせられたり、額にカラフルなティカをつけられたり、花飾りのネックレスをつけられたり、ネパールの帽子"トピ"をもらったり.....工程が複雑ですべて思い出せない。
そして気づけばこうなっていた。
私は息子くんや娘さんたちと写真を撮った。これで私もネパリになったのかもしれない。
まるで入院見舞いのような食べ物の数々までいただいた。
果物、ナッツ、お菓子、パン.....「これ全部あなたのものよ」と言われた。食べきれる自信がないなあ、と私は人差し指で頬をかいた。何であれ、外部の人間である私への優しさに私は心から感謝した。
ちなみにバイ・ティカはバイへのティカといえども、娘さんたちにもお祝いをする。私たちも娘さんたちからされたのと同様、娘さんたちにティカを授けたり、ヨーグルトを食べさせたり、ネックレスをかけたりしてあげた。
また、「バイ・ティカではね、兄弟たちは姉妹たちにプレゼントをあげることになっているの。お金でもいいし、なんでもいいのよ」と、日本のネパリの友人の奥さんが朝に電話で教えてくれた。私はそのアドバイスに礼を述べ、鞄をあさった結果、昨日購入したアニメのバッジを渡した(アーニャ、さよなら...)。
娘さんたちは喜んでくれたようだった。「それ、この前その日本人の兄ちゃんがLabin Mallで買って、僕が受け取らなかったやつだよ」とか、息子くんが余分なことを言わなければいいのだが、と私は願った。
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バイ・ティカはスペシャルなイベントなので、その後のダルバートもスペシャルだった。
右上の肉は"カシコマス"、すなわち山羊肉でである。日本のインドネパール料理店のマトンカレーのマトンとは材質が異なる。ネパールのカシコマスは、骨つきで、豪快で、ぷるぷるとした弾力がある。現地でも他の肉に比べて、少し値段が張るらしい。
バート(ご飯)、タルカリ(大根の炒め物)、アチャール(ジャガイモや大根の漬物)、ダヒ(ヨーグルト)、サーグ(青菜炒め)、そしてカロダル(豆のスープ)。
手で食べる。美味いっ。ご飯とダル、アチャールとカシコマスのジョール(汁)はおかわりした。
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夜電気を消しベッドに横になると、食べ物の匂いが漂ってきた。あぁ、バイ・ティカで受け取った食べ物の大皿を、部屋に持ってきていたんだった。暗闇の中で顔を左に向けると、50cm先のセルロティやバナナの存在をありありと感じた。眠れるだろうか。いや、ネパールは慣れだ。慣れれば何だって可能なのだ。そのうちこの大皿が枕元にないと、眠れなくなるだろう。そんなもんだ。