Day122: 段ボール、"犬が来る"、人混みの狂喜
2月の下旬、ネパールは"シヴァ・ラトリ"を迎えた。
年に一度シヴァ神の生誕を祝うお祭りで、シヴァ神が地球上に降り立つ唯一の日とも言われます。この日には、ネパールやインドでは夜通しで祈りの歌や踊りが行われ、人々はシヴァ神を祀る寺院に集まります。 ネパール最大のシヴァ寺院であるカトマンズのパシュパティナートは、ネパールだけでなく隣国インドからも何万という人々が巡礼に訪れ、ひときわ賑います。神の名を唱え、神を想い礼拝する事で人生が清められると信じられ、人々は口々にシヴァの名を唱えながら参拝します。
シヴァ・ラトリの日はカレンダー上で赤く塗られており、国民の祝日のようである。
ということで、滞在先のご家族と一緒に、シヴァ神を祀る地元の寺院周辺を歩いて回ることになった。
まだ小学生低学年くらいの男の子は、特に張り切っていた。私の手を引いて駆け出す。背伸びして少し大きめの自転車に乗り、私にハンドルを支えさせる。私におんぶをせがむ。彼を背負いながら坂を登っていると、体育会系のトレーニングのように感じてくる。
子どもにとっては近所の散歩も、一つの冒険なのだろう。玄関を一歩出ればそこには非日常の世界が広がっているのであり、喜びを爆発させているのだろう。より広い世界を見に行くのは大事だが、身の回りの世界でいかに十分広いかを、子どもは大人に教えてくれる。
とはいえ、とにかく彼に怪我をさせないよう細心の注意を払う。これは海外旅行保険でなんとかなる、という問題ではない。
寺院の近くに出店が数軒並んでいた。滞在先のお母さんが買ってくださったものを、その辺の空き地に座りながら何人かで分けた。

チャトパテ(Day53、70参照)。ネパールの屋台スナック。持ち帰りでビニール袋にそのまま入れられていた。
ローカルなチャトパテは、スプーンが段ボールの切れ端になる。再利用。プラスチックスプーンの消費量を減らそう。
素材の硬さゆえ、スプーンとして有効に機能する。おそらく中央を軽く曲げたほうが、チャトパテをすくいやすく食べやすい。
段ボールのスプーン。葉っぱのお皿(Day19)。手のスプーン(Day6、30参照)。こうして私たちの身体は、食器の一部になっていく。

続いて"ジレビ"。ただ砂糖を硬めて揚げたような甘ーいお菓子。本当にただ甘いだけだが、私は好きである。花形に美しく作られている。

よくわからないクッキー。
ちなみに、私は何を食べてもなぜかほとんどお腹を壊さないが(滞在1ヶ月後の原因不明の下痢の後、一度も下痢になったことがない)、「チャトパテはいろいろ香辛料が多めに入っているし、外国人は病気になるよ」と、後日ネパリが教えてくれた。お腹を壊す覚悟がある人のみ、挑戦したほうがいいかもしれない(特にダンボールスプーンは)。
男の子はチャトパテを次から次へと口に運んでいた。
軽食後も、彼は元気発剌としていた。私の手を売店まで引っ張っていき、「このお菓子が欲しい」と指差したが、お母さんからイエローカードを受けた。道を逸れて他人の土地に入っていこうとしたので、お母さんからついにレッドカードを受けた。
「犬が来るわよ!噛むわよ!」
お母さんのこの強い言葉を聞くと、彼は不安そうに彼女の手を握った。
竜馬がゆく、犬が来る。
寺院に着くと、彼は勢いよく上まで登っていった。そして勢いよく帰ってきた。皆で帰路につこうとした時、彼は寝ていた野良犬に小石を投げようとした。私はハンドボールのディフェンスの如く、必死に身体を張ってブロックした。小石はギリギリ犬に当たらずに済んだ。
恐怖相手に挑発してはいけないよ。皆犠牲になるよ。
帰り道で、どこかの飼い犬のドイツ・シェパードが上のほうから吠えた。私は足を止めた。男の子は少しビクッとしていた。
彼はそれでも一人でグングン先に進もうとした。「犬が来るわよ!噛むわよ!」という叫び声が、後ろから飛んできた。男の子はお母さんや私に寄ってきて、手を握った。
狂犬病が残っている国だと、"犬が来る"に凄絶な抑止力があるようである。噛まれた人の話を聞いたことがあるが、本当に気をつけようと思った。Day3のような愚行は二度と繰り返してはならない。
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夜はパシュパティナート寺院に来てしまった。

人・人・人。インドからの巡礼者もこぞって来るのでわかっていたが、どこを見ても人で溢れかえっている。韓国イテウォンの雑踏事故のようなことが、起きなければいいが。

Day113-117に訪れた際のパシュパティナートは、どちらかというと厳粛な雰囲気だった。今日はお祭りとだけあって、綺麗に装飾されている。

寺院に続く通路には、最新iPhoneの発売日とは比にならないくらい、目を疑うほどの長蛇の列ができていた。シヴァの生誕を祝う日に参拝をするのである。私はそれを横目に通り過ぎた。

警察も多数配置されていた。DJポリスはさすがにいなかった。
後日知人から聞いたのだが、あまりに人が多すぎて、寺院内の橋が壊れたらしい。それもある種の雑踏事故である。

人の波に流されるように坂を登る。やはりあそこからの光景を見たい。

先日と同じポジションから。我ながら良い写真が撮れた。一年に一回の特別な日とだけあって、現代的なようで幻想的にライトアップされている。
奥にメインの寺院。その下にバグマティ河。視線を左に送っていけば、何箇所か炎がメラメラと上がっている。先日聞いた通り、パシュパティナートでは365日火葬が行われているようである。
門に戻ろうとしていく途中、至る所でネパリ男子の集団が何やら大声で騒ぎながら行進していくのを目にした。
シヴァ神はマリファナが好きらしい。だから、狂喜乱舞している彼らは、この日を利用して吸ってしまっているのではないかと、偏見かもしれない考えが私の頭から離れなかった。
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